就労移行支援とは
就労移行支援とは、障害者総合支援法を根拠とする障害者への職業訓練制度の一つで、企業で働きたい障害者の方を対象にした福祉サービスです。働くうえで必要な知識や能力を身につけることが出来たり、仕事探しをサポートしてもらえます。
ここでは、具体的に就労移行支援がどのようなサービスなのか説明していきます。
就労移行支援の対象者
対象者は一般企業での就労を希望している障害や難病のある方で、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる18歳以上65歳未満の方です。
以下のような障害・難病をお持ちの方が主な対象者となっています。
精神障害:総合失調症、うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安障害、適応障害、てんかん、アルコール依存症など
発達障害:注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、アスペルガー症候群、自閉症、広汎性発達障害など
身体障害:難聴・聴覚障害・視覚障害・肢体不自由・内部障害など
知的障害:知的障害など
難病・その他:その他難病(障害者総合支援法の対象疾病)
障害者手帳がなくても医師の診断や自治体の判断によって利用が可能な場合がありますので、お住まいの市区町村の障害福祉窓口まで問い合わせてみてください。
就労移行支援のサービス内容
就労移行支援の主なサービス内容は以下となります。
- 生産活動・職場体験などの活動の機会提供による、就労に必要な知識及び能力向上のための訓練
- 求職活動における支援
- 利用者の適正に応じた職場の開拓
- 就職後の職場定着に必要な相談や支援
事業所によって訓練の内容が異なってくるので、見学で自分に合ったプログラムが実施されているかどうかを確認しておくと良いでしょう。
どういった訓練をするのか?
具体例を挙げますと、理論を学ぶだけでなく働くうえでより実践的なことを学ぶことが出来るプログラムもあり、同僚とランチで行きたい店が異なる時にどうすればよいのか?や異なる意見を持った2人の上司の板ばさみになったときにどうすればよいのか?など職場で起こり得るシチュエーションでロールプレイングやディスカッションを重ねて解決方法を身に着けていく訓練もあります。
他にもプレゼンテーション資料の作成と発表を通じて自分に何が出来て何が出来ないのかを見極めたり、企業が求める人物像に沿った自己アピールの方法なども学ぶことが出来るコースもあります。
利用料金
就労移行支援事業所を利用するに当たっては利用日数と世帯の収入状況によって利用料が変わってきます。通所日数が多いほど利用料も増えますが、世帯収入による負担上限月額が決まっていますので低料金で利用できるケースがほとんどです。
- 生活保護受給世帯 : 0円
- 市町村民税非課税世帯(注1) : 0円
- 市町村民税課税世帯(所得割16万円(注2)未満)(一般1) : 9,300円
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます(注3) - 上記以外 (一般2): 37,200円
(注1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。
(注2)収入が概ね600万円以下の世帯が対象になります。
(注3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。
利用期間
利用者ごとに標準期間24ヶ月(2年)以内と決まっています。ただ、自治体の個別審査を経て必要性が認められると更に最大で1年延長されることがあります。
実際の利用期間については利用者により異なり、早い人で数ヶ月で就職先が見つかり退所される方もいます。
申込み方法
就労移行支援の利用を希望される方は、市区町村の障がい福祉窓口やハローワークで相談するかWebサイトなどで直接事業所を調べてみると良いでしょう。気になる事業所が見つかったら見学や体験を申込むのがおすすめです。
通いたい事業所が決まりましたら、市区町村の窓口で就労移行支援事業所の利用申込みを行います。申請してから実際にサービスを受けることが出来るまで約1ヶ月ほどかかります。
事業所の選び方のポイント
さまざまな事業所があり、それぞれ訓練の内容や就職活動サポートの内容が違います。見学や体験でどういったところをチェックすると良いのか紹介します。
- 事業所の雰囲気
- 訓練内容やプログラムが自分に合っているか
- これまでの就職実績
上記の点を見学や体験時に確認して自分に合った事業所を探すと良いでしょう。
就労移行支援と就労継続支援の違い
就労移行支援と似た福祉サービスに就労継続支援というものがありますがどういった違いがあるのでしょうか?
就労移行支援と就労継続支援の違いを一言で言うと一般就労に向けて職業訓練を行うのが就労移行支援で、就労継続支援では実際に仕事をしながら一般就労への就職を目指す福祉サービスとなります。
就労移行支援の場合は工賃などの給与が発生する場合もありますが基本的に職業訓練がメインとなり、就労継続支援では基本的に給料をもらう仕事を行いながら仕事に慣れてから一般就労を目指すことになります。
そのため、一般就労への就職率は就労移行支援のほうが就労継続支援よりも高く、より一般就労を目指す方に向いている福祉サービスと言えるでしょう。
参考
就労移行支援についてまとめ
就労移行支援は障害に理解のあるスタッフのサポートを受けながら職業訓練や就職のサポートを受けることが出来たり、就職してからのサポートも受けることの出来る福祉サービスです。
障害を持つ方が自分に合った仕事の進め方などを学ぶことが出来るサービスで、多くの方が利用しています。
さまざまな障害を持つ方にあわせて事業所も色々と訓練プログラムを工夫していますので、複数の事業所を比較して自分に合ったところを見つけることが出来るようになっています。
就職できれば良いというわけではなく、就職後に長く働いていけるように訓練する事業所ですので、働くことが出来るようになるまでじっくりと訓練を行い、自信をもって社会の一員として働けるようにサポートしてもらいましょう。